松下電器とAppleにて勤務経験のある著者が書く本書は、快進撃を続けるAppleのCEOスティーブ・ジョブズが今までのプロジェクトで発揮してきた類まれなる交渉力を、多様なエピソードとともに紹介している。
普通のビジネスマナーではありえないことばかりなので、実際のビジネスで即使える事例が示されているわけではない。
スティーブ・ジョブズという人物がいい意味でも悪い意味でも常識にとらわれることが決してないというのが見て取れる。
各エピソードの最後に著者が実際のビジネスで役立つ視点をエピソードから抜き出し、他の著名な経営者のケースも交えて紹介する構成は面白い。
本書ではスティーブ・ジョブズだけでなく、本田宗一郎や盛田昭夫、松下幸一郎のエピソードも収められており、経営者の多様な視点、厳しさを感じることができる内容になっている。
以下ピックアップ
------------------------------------------------------
・私達の暮らしは小さなプレゼンに溢れている。1対1のプレゼンがうまくできれば、二人、複数人相手のプレゼンもできるようになる。
・規律無しに雑多な情報が流れると企業活力が低下する。だからカルロス・ゴーンも、スティーブ・ジョブズも自らのみで発表する。
・ソニーや松下にもiTunesのようなビジネスを考えていたエンジニアはたくさんいた。ただ、ハードウェア業界を乗り越えて、音楽業界の権利者たちと面倒な交渉を延々とする覚悟があるような情熱ある経営者がいなかった。
・パワーのある経営者は一般人と時間感覚が違う。
・仲良しごっこでは世界を驚かすようなすごいものはできない。
・違った分野のもの同士がタッグを組んでこそ力を発揮する。
・指揮官が二人いては戦争はできない、といって本田宗一郎は後任社長に全てを任せ、会社にも顔を出さないようにした。
・相手が自分を本当に必要としていれば、破り捨てた契約の先に有利な契約が待っている。
・ビジネスで戦っている相手は常に変化する。ディズニーのアイズナーはジョブズがいつまでも映画素人だと思い込んでいたため、交渉に負けた。
・自分の仕事の専門分野を決め付けて、線引きをしてしまうことは能力アップのチャンスを逃すことだ。
・周りがひいていても発言する。恥ずかしくても、無言の圧力を感じても何度も何度も。そのうち恥も平気になり、会議で黙って座っているだけの連中が無能に見えてくるはずだ。
・どこにもないものは市場調査からは決して生まれてこない。
・ジョブズは他社との契約は大まかなところだけでなく細かなところまで全て自分でやる。他の企業の経営者のように担当者に投げることはしない。詰めまで全部自分でやる。
・無能な経営者はお金に振り回され、有能な経営者はお金を振り回す。
・ピンチを嘆かず、乗り越えるものと考えられる人がチャンスの入り口に立てる。
・交渉の成否は戦う前に決まる。不備があると弱気の虫が顔を出す。弱気な部分が見えれば必ず負ける。
・ジョブズは失敗を反省して弱みを伸ばすようなことはしない。自分の強みだけを徹底的に伸ばす。
・ヒットを予感するのは簡単ではない。タイタニックもスターウォーズも前評判は最悪だった。iPodも。
・厳しい戦いに先陣を切って挑んでいく情熱がトップには必要。
・「自分の人生」を生きようとする「挑戦するサラリーマン」からこそすごいものは生まれる。
------------------------------------------------------
パーソナルコンピューター、CGアニメーション、音楽配信、携帯電話とどんどん業界を切り開いていくジョブズはこれからどんなことをみせてくれるのでしょうか。